北海道の家づくりデータベース
室蘭エリア版(胆振・日高)
2026年(令和8年)5月24日(日曜日)

(一社)北海道ビルダーズ協会は3月14日、渡島管内七飯町で「2025年度サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)」の第1回採択住宅現場研修会を開いた。国の事業で初となる「北方型住宅ZERO」を要件とする独自プロジェクトの一環。同プロジェクトに採択され、国の補助を受けた渋谷建設(函館市)と山野内建設(渡島管内八雲町)の物件を公開し、管内の工務店や設計事務所、渡島総合振興局などから14人が参加した。先導的な脱炭素住宅の設計・施工ノウハウを共有し、道内への普及を目指す。
研修会は、省エネや省CO2に関わる先導的な技術を導入した住宅プロジェクトに対し国が支援する「サステナブル建築物等先導事業」の採択プロジェクトにおける普及・啓発活動の一環。 このプロジェクト「北方型住宅ZERO【長期優良住宅】~道内普及・啓発推進事業」は、道の「北方型住宅ZERO」をベースに省CO2先導型住宅を道内各地に建設する実践モデルで、これを要件とした事業への国の支援は初となる。
研修会では、同事業の補助を受けた渋谷建設と山野内建設の物件と施工現場が公開された。
冒頭、あいさつに立った同協会事務局長の中田浩司氏は「脱炭素に取り組む住宅を全道に広めたい」と意気込みを語った。
渋谷建設の物件は、木造軸組工法、延床面積125.86㎡。UA値は0.20。太陽光発電パネル10.92kWを搭載する。同社設代表取締役の渋谷旭氏は、見積もりの前に熱計算を済ませることの重要性を強調した。
「太陽光発電を含まない一次エネルギー消費量35%削減」という基準の達成には、躯体性能の向上に加え、設備機器の細かな選定が必要になる。それらはコストに直結するため、始めに熱計算を踏まえて仕様を確定し、正確な見積もりで施主に説明するよう呼びかけた。
その他、第一種熱交換換気システムの排気の暖気を床下に送るなど、設備面での工夫も紹介。また、冬期の屋根からの落雪を防ぎつつ、大容量の太陽光パネルを積載するため、無落雪のフラット屋根を採用していることや、確認申請図面への書き込みミスを防ぐために節湯水栓などの設備機器を極力シンプルに選定するなどの、実務者ならではの試行錯誤が語られた。

山野内建設の施工現場
山野内建設の久保田一士氏は、同社物件の設計概要と性能数値を解説した。UA値0.16を達成し、第一種熱交換換気システムや寒冷地仕様のエコキュートなど徹底した高効率化を図り、太陽光発電を含まない状態でも一次エネルギー削減率50%を達成。太陽光発電を含めると削減率125%となり、「GX指向型住宅の基準も大きくクリアできる」と胸を張った。
また、一次エネルギー消費量の計算を有利にする実務的なテクニックとして、全水回りへの節湯水栓の採用や、全室LED照明と人感センサー、調光機能の組み合わせなど、評価上の数値を引き上げる工夫も共有した。
一方で、先導的な住宅建築ならではの苦労にも言及。長期優良住宅の認定などに伴う構造計算が複雑化しており、「設計・施工現場の負担は小さくない」と明かした。
続いて、北海道立総合研究機構建築研究本部の佐々木優二氏を交えディスカッションが行われ、高断熱住宅における夏場のオーバーヒート対策などが議論された。冬の日射取得による省エネよりも、夏の過度な室温上昇への懸念が大きいとする意見や、床下エアコン運用時の結露対策、冷房効率の課題などが話し合われた。 最後に、道建築指導課主幹の田村佳愛氏から「北方型住宅ZERO」と「きた住まいる制度」について改めて説明が行われ、住宅履歴情報の適正な管理の重要性が呼びかけられた。
道ビルダーズ協会によると、この事業による今年度の補助額は1件当たり約150万円で、26年度は1件約180万円となる見込み。次年度は道内6社による6棟の実施を予定しており、今後も研修を通じて先導的な住宅の全道的普及を推進していく方針だ。