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道建築技術協会フォーラムで専門家対談「住まい・コロナの今とこれから」

道建築技術協会フォーラムで専門家対談「住まい・コロナの今とこれから」

コロナ禍の社会において、住宅に求められる「安心」とは何か、作り手も住まい手も答えを模索している。1月21日に行われた(一社)北海道建築技術協会のフォーラムで、北大大学院工学研究院教授の林基哉氏、道立総合研究機構北方建築総合研究所主査の村田さやか氏、キクザワ(恵庭市)社長の菊澤里志氏、山本亜耕建築設計事務所(札幌市)代表の山本亜耕氏の4人が「住まい・コロナの今とこれから」をテーマに対談した。その内容から、スペシャリストの知見を紹介する。進行役は北大大学院工学研究院准教授の菊田弘輝氏。

菊田
住宅内にウイルスを持ち込まないために、どのような建築が必要か。

山本
一つは動線計画。玄関に入ってすぐに手洗いがあるのと一番奥にあるのとでは大きく違う。もう一つは換気計画。例えば玄関の近くに開口できる窓を付けて、外の冷たい空気を一度玄関で暖めてから居間に送る二段式の自然換気ができるようにする。まず考えられるのはこの二つ。

菊田
建て主からは実際にどのような要望があるか。最近の動向を。

菊澤
かなりの確率で玄関に洗面がほしいという要望がある。タッチレス水栓にしたいという人もいる。宅配ボックスを付けたいという人もすごく増えてきた。あとは書斎。コロナ以前はほとんど要望がなかったが、最近はテレワークのために書斎を作りたいという声をよく聞くようになった。

菊田
最近、住宅で陰圧管理をするという話が学会でよく聞かれるが、実際に可能か。

村田
換気の吸い込み口の位置を考えて、感染の疑いがある人はできるだけ風下側にいるようにするなど、いろいろ考えられるが、住宅ごとに計画が異なるので一概には言えない。そこは建築のプロからアドバイスできる部分と思う。ただ、それが感染症対策としてどの程度有効なのか。換気は必要だが、どこまでやればいいかは分からない。

山本
病気の方が休んでいる部屋を換気的に独立させるには、すべての空気がその部屋を通って外に排気されるように換気経路を組み直す必要がある。ある程度気密性があるドアに替えて、その部屋独自に換気を作る。例えば、既存の第3種換気の開口を使って、壁付けの給排気型の24時間換気ファンみたいな物を取り付ける。ただ、北海道は基礎断熱が普及しているので、床下がつながっていたら意味がないという問題もある。

菊田
部屋はいろいろな所がつながっている。室内の空気を循環させる仕組みが感染対策上は逆によくないという話になったらどうするか。


住宅内に感染者がいる場合、家族への感染を防ぐのは非常に困難。少しでもリスクを下げるためにどうしたらいいかという問題だが、どれだけお金をかけたらどこまでリスクを下げられるかは今のところ分からない。今、学会で住宅の換気に関する提言書を作ろうという取組みが始まっているが、「こうすれば大丈夫」というものを出すと、国は「じゃあ自宅待機してください」という方針になってしまう。住宅でどこまでやるべきなのか、これから出てくるデータを基によく考えないといけない。

菊田
建て主にはどう説明しているか。

菊澤
どれだけの換気量が安全なのかを聞かれても、現状では分からないと言うしかない。そこさえはっきりしてくれば、必要に応じて換気量を増やすようなシステムが出てくるかもしれないので、これからの研究に期待している。

山本
分からないでは許してもらえないこともある(笑)。もう少し具体的に、例えば換気量を増やしたいならレンジフードを使うのが一番分かりやすい。強運転なら1時間に500~600㎥ぐらいのすごい換気量になる。当然、それだけ空気を取り入れるので暖房エネルギーが増えて燃料費が増えることも伝えたうえで、そういうやり方がある。

菊田
空気清浄機はどのくらい効果があるか。


HEPAフィルターが付いた空気清浄機ならほとんどのエアロゾルを取ってくれるので、隔離部屋を作ってそこで空気清浄機を運転するのは相当に有効な手段。ただ、機種によって効果が違い、どの程度の性能が必要か基準がまだ定まっていない。毎分5㎥の風量で強運転すると音がかなり大きくなる。厨房の換気扇も非常に有効だが、日常的に使うにはうるさすぎる。場面によって使い分けの検討も必要。

村田
換気を増やせば暖房エネルギーも増える。より多くの換気量が必要なら、空気清浄機の併用も有効になってくると思う。30年以上住み続けることを考えると、住宅に求められるものはコロナ対策が1番ではないと思う。それぞれ優先するものがあって、そのうえで必要ならば空気清浄機のような補助的な機器を使って対策をプラスしていくほうが簡単ではないか。

菊田
換気のほかにも温湿度条件など、これから答えを出していかなければいけないことは多い。今回、コロナ禍を通じて換気の重要性が広く啓蒙されたが、研究で得られた知見が設計者や施工者を通じて住宅の住まい手に伝わる。しっかりと説明して住宅に関するリテラシーを高めていくことが大切だと改めて感じる。

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