北海道の家づくりデータベース
室蘭エリア版(胆振・日高)
2026年(令和8年)4月7日(火曜日)

成長するために投資ファンドを選択
ロゴスホーム(帯広市)が投資ファンドからの出資を受け入れたニュースは、道内住宅業界に大きな衝撃をもたらした。6月3日付で、投資ファンドを運営するエンデバー・ユナイテッド(東京都)から出資を受け、新たなスタートを切ったロゴスホームは、業界再編の「台風の目」となるか。引き続きロゴスホームの舵取りを担う池田雄一社長に今後の展望について聞いた。
道内住宅業界に押し寄せる再編の波
2003年の創業以来、毎年売上げを伸ばしてきたロゴスホームが投資ファンドから出資を受け入れたのは、なぜか。
「実は、昨年の秋頃に大手住宅会社から企業買収の打診がありました。当社を買いたい、という話で驚きました」
今後、国内の住宅着工戸数が減少することは確実。縮小する市場で大手企業が成長を維持するためには、M&A(合併・買収)が有効な選択肢の一つとなっている。
「当社を評価してくれたからこその買収提案ですから、経営者としてうれしかった。その反面、大手の傘下に入ることで自由な経営が出来なくなることが心配でした」
大手住宅会社の子会社となることで経営の自由度を失うことを懸念した池田社長は、丁重に申し出を断った。しかし、この買収提案がきっかけとなり、自社の将来を再検討することとなる。
「買収提案してきた大手住宅会社は、複数の企業に声を掛けているようでした」
「道内にも業界再編の波が来る。当社の今後を考えた時に、より安定した資本と大きな成長戦略が必要だと強く感じるようになりました」
住宅業界では再編が静かに進んでいる。トヨタホーム、ミサワホーム、パナソニックホームズが来年1月に統合するニュースは記憶に新しい。道内でも豊栄建設や国木ハウスの株式譲渡は業界の耳目を集めた。
ある業界関係者は「最低でも年間100棟の着工がないと、道内ビルダーの経営は厳しくなる」と指摘する。市場が縮小する中、業界再編の波は避けられない。
買収提案を断った後、今度は投資ファンドから出資の提案があったという。
ファンドというと、安値で買い叩いた株式を高値で売り抜けるような「ハゲタカ」を連想する人がいまだに多いが、今回、同社に出資したようなファンドは、「プライベートエクイティファンド」と呼ばれる。未公開株式を取得し、企業の成長支援を通じて株式価値を高め、その後IPO(新規株式公開)や第三者への売却を通じて利益を得るファンドだ。
「(大手住宅会社の買収と違って)これまでの経営方針を維持できる点が決め手でした。当社の経営陣も出資し、資本を増強した上で成長を加速させることができる投資ファンドからの提案は魅力的です」
同社の19年5月期の売上高は前期の88億円からさらに伸び、100億円の大台に乗る見込み。投資ファンドの出資により、IPOの可能性も高まる。
同社が飛躍的に成長するに至った分岐点は3つあるという。それは、「エル・ミナ」「規格住宅」「新卒採用」だ。
エル・ミナは、09年に帯広市内にオープンした全天候型ショールームの名称。ローコスト工務店の一つと見られていた同社が、地元での評判を一気に高めることになったショールームである。旧ビアホールの建物の中に、タイプ別のモデルハウスを4棟展示した全国でも珍しいショールームは、オープン2日間で1153組を集めた。
「会社の信頼度を高める効果があり、その後の多店舗展開の礎になった」
2つ目が、12年に始めた規格住宅「ハウジングカフェ」の展開だ。
「カフェが無かったら、ここまで急速に伸びなかったかも知れない。住宅を規格化することにより、販売も施工も、新規店舗の出店も仕組み化できたことが大きかった」
自由設計の注文住宅だけで成長を続けるのは難しい。自由設計に対応できる人材を育成するためには時間がかかり、企業の成長スピードに間に合わない。品質を確保しながらスピードを維持するには、規格化と仕組み化は必須だ。
3つ目の分岐点は、10年4月から始めた新卒採用である。優秀な学生を集める新卒採用の仕組みを何年もかけて磨いてきた。
「会社に対してロイヤルティ(愛着心)が高く、優秀な新卒の採用が出来たからこそ、多店舗展開が可能になったと思う」
積極的に採用した社員に対する責任が、投資ファンドと組んでまで成長を目指す理由の一つだ。
「会社を成長させないと、社員に新しい仕事に挑戦する機会を作ってあげられません。会社が成長しなければ、新卒で入社した社員は何年経っても下っ端のままです」
経営者には会社を成長させる責任があると語る言葉には、池田社長自身の経験が影響している。
池田社長が若い頃に勤めていた小さな建築士事務所では、代表である建築家の下で、ほとんどの社員はアシスタント的な仕事に従事していた。
入社から数年が経ち、そろそろアシスタント的な仕事を抜け、新しい仕事に挑戦したいと思っていた。そこで、自分の実力を試すべく、社外の設計コンペに参加したい旨を建築士事務所の社長に申し出た。すると、社長は「余計なことはするな」と一喝し、いつもと同じ業務をするように指示した。その翌日、会社を辞めた。
「社員が成長できない、挑戦させてもらえない環境では、優秀な社員は辞めてしまいます。当社に入社してくれた社員に対して、会社を大きくする責任が経営者にはあると思うのです」
前述の3つの分岐点と同時期の09年、同社は「プロジェクト505」という計画を立案した。それは、10年後の2020年までに、道内の注文住宅着工戸数を505棟に伸ばすというもの。当時は100棟に満たない規模だったが、遂に10年越しの計画達成も近いところまで来ている。次はどんな成長を描くのか。
「17年から進出している東北エリアを手始めに、全国展開を目指します。そのために、積極的な新規出店計画、木質パネル工場の整備、CAD業務の海外移転等を進めます。また、施工品質を維持しながら拡大するために、瑕疵保険の検査に加えて、第三者が施工中の建物を検査する仕組みを全棟に導入する予定です」
投資ファンドからの出資を受け、次の成長ステージを目指す体制が整った同社の今後に注目が集まっている。
