北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)7月14日(火曜日)

今やどの工務店も自社のウェブサイトを持つのが当たり前になっている。だが、その活用は会社によって大きな開きがあるようだ。一方は、月間アクセス数が1万を超え、資料請求や来場予約などの反響数が月50以上、受注にもつながり契約件数が伸びている。他方は、ほとんどアクセスされず、社員ですら自社のサイトを見ることは稀だ。この差は一体どこから来るのだろうか。住宅専門のウェブコンサルティングを提供するビルダーズネット(札幌市)代表、萬田柔氏がその要を語る。
ビルダーズネットは、工務店に特化したウェブサイトの構築と運用、コンサルティングを行っている。2010年に発足し、これまで手掛けた企業は道内から道外まで多数にのぼる。
代表の萬田氏はウェブコンサルタントとして実務に携わる一方、セミナー講師も務める。この6月には、これまで培ったノウハウを詰め込んだ著書「工務店社長のためのウェブマーケティングバイブル」(知道出版)を出版した。
萬田氏は、「コロナ禍によってウェブサイトのアクセスに変化が見られた」と話す。ビルダーズネットは全国の工務店のアクセス解析を行っているが、リピーターからの資料請求や来場予約が急増したそうだ。リピーターとは、何度も同じウェブサイトにアクセスしたことがあるユーザーを指す。
コロナ禍前は、初めてサイトに訪れた新規ユーザーがモデルハウスや完成見学会の来場予約をするケースが多かった。家を建てたい人は、できるだけ実物をたくさん見てから検討していたのだ。
「今はウェブ上で他社と比較し、サイトを何度もじっくりと見て、魅力を感じたところにだけ来場する」と萬田氏。だからこそ、何度も訪れたくなるウェブサイトにする必要がある。「ただおしゃれなだけ、見栄えが良いだけでは効果がない」と萬田氏は断言する。
ではどうすれば良いのか。萬田氏の答えは、「まず初めにペルソナを作ること」。 ペルソナは「自社にとっての理想の顧客像」のことで、実在するかのように年齢、性別、職業、家族構成、趣味などを具体的に設定する。顧客を絞ることになるのではと心配する向きもあるが、不特定多数の人に働きかけても他のウェブサイトに埋没してしまい結局は誰にも届かない。
それよりペルソナを決め、その人にアピールするためにはどうすれば良いか考えることで、お客様目線のウェブサイトになる。そして自社の家づくりに合った顧客の目に止まるようになる。
ペルソナの設定は、できるだけ詳細にするほど効果が上がるという。今どんな家に住んでいるか。休日は何をしているかなど。そうすれば顧客の好みを推測してサイトに何が必要か分かるようになる。会社が目指すゴールが明確になるのもメリットだ。「軸がぶれることなく、統一した情報発信が可能になる」。
次に大切なのは、「会社の人柄がわかるようにする」ことで、萬田氏は「リピーターは人を見ている」と話す。
工務店のウェブサイトを訪れた顧客には一定のパターンがあるという。まず、どんな家を作っているのかを知るために「施工実例」と「お客様の声」「会社概要」を見る。そこで自分の好みに合致すると、次にどんな人が会社に居るのかをチェックするため「スタッフ紹介」を見る。高額商品の家を買うのだから、信頼できる人に頼みたいという心理の表れだ。
工務店の「人柄」をより強く感じさせ、何度もサイトを訪れるようにするために、萬田氏は「スタッフブログ」を薦める。書き手の人間性が自然に表れるから親しみを覚えてもらえる。更新しやすいのでリピーターを容易に呼び込める。「顧客の心を掴む、その効果は大きい」。
ブログを仕事で書くのは面倒と思う人は少なくない。だから社内で担当を決めるより、多くの社員が好きなことを自由に書けるように環境を整えたほうが良いそうだ。更新頻度が上がるし、反響があればその社員のモチベーションがアップする。くれぐれも社外に委託しないこと。自分たちの言葉で書くことが絶対条件だ。
ブログの内容は家づくりに限ることはない。美味しかったお店、休日にしたこと、日々思うことなど、日常を綴ることで素のままの人間性が伝わる。「リピーターは会社の真の姿を知りたがっている。顔が見えると安心できる」と萬田氏。
工務店のウェブサイトを何度も訪れるリピーターの約80%がブログを閲覧しているという。ブログを見るために訪れている人がいると推測される。萬田氏は、スタッフブログを「工務店にとって一番大切なコンテンツ」と話す。そのためトップページからブログページへスムーズに誘導することも重要になる。

スタッフブログはグルメなどプライベートなことでも良い(画像提供:石山工務店)
ウェブサイトができたら、萬田氏が「積極的に取り入れてほしい」というデジタルツールがある。顧客一人ひとりに最適なアプローチを導く「MA(マーケティングオートメーション)」だ。
ウェブサイトと連動して、資料請求などのアクションを起こした人をリスト化する。その後、何時何分にどのページを閲覧したかを自動的に記録していく。その行動を分析することで適切な営業活動ができるようになる。
例えば、資料請求してから何の行動も起こさなかった人(そのうち客)が、数ヵ月たってサイトの実例集を繰り返し見るようになった。このタイミングで見学会の案内メールを送れば、来場する確率が高い。
また、土地情報のページを見ている人に、土地と建売を紹介するメールを送る。知りたいことを教えられ、好感度が上がるだろう。こうして、成約する可能性の高い見込み客に育成する。
MAは便利なツールだが、データをどう活かすかは人が考えることで、「アナログの運用が必要」になる。その顧客には何をしたら喜ばれるか、お客様目線で考えることはデジタルにはできない。
工務店のスタッフが書くブログが効果的なように、萬田氏は「デジタルとアナログを融合することがウェブ戦略のポイント」と強調した。

マーケティングオートメーションの仕組み
石山工務店(旭川市)は、1958年創業の地域に根付いた老舗ビルダー。2019年に萬田氏が代表を務めるビルダーズネットとウェブコンサルタント契約を結び、2020年にウェブサイトのリニューアルを行った。現在もサポートを受けている。どのようにリニューアルし、どんな効果があったのか。新築事業部営業本部長の水上翔太氏に話を聞いた。
ビルダーズネットに依頼する前は、ウェブの専任者がいなくて私が営業の片手間で担当していました。忙しい時は更新が滞り、また、更新のたびに制作会社に依頼して費用が発生し、不便に感じていました。これからはウェブからの集客がメインになり、スマートフォンにもきちんと対応したいと思っていたところ、タイミングよくビルダーズネットの萬田さんから提案いただく機会がありました。 他社事例のことなど知識が豊富で、将来的にMAも導入したいと考え、依頼することを決めました。
リニューアルにあたって変えたのは、「人」が感じられる親しみやすいサイトにしたことです。それまではかっこ良く見えるデザインに注力していました。 当社は、旭川市とその近郊で家づくりをする地域密着の工務店です。限られたエリアでは人の顔が見えることが重要。そこでスタッフの顔が見えやすくなるように、新たにスタッフブログを立ち上げました。全社員で当番制とし、基本的に1日1本アップしています。加えて、ウェブ担当者がSEO対策用のブログを書いています。
リニューアルを機に各部門からウェブの担当者を選出し、月1回ウェブマーケティング会議を開いています。ホームページの更新に意識が向くようになり、やるべきことが明確になリました。例えば、ある検索ワードでGoogleのファーストページに表示されるためにはどうしたらいいのか、萬田さんからアドバイスを受けながら改善できるようになりました。
アクセス数は、リニューアルしてから月6000〜7000件に増えました。半年ほど前にウェブ広告を行ったところ、最大で1万4000件に。今でも1万件以上のアクセスがあります。
資料請求や来場予約などの反響数も1週間に1件程度だったのが、多い時で10件に。今は週に3〜4件ほどコンスタントにあります。受注にもつながり、昨年度は新築戸建住宅の受注数が初めて100棟を超えました。
今年1月からMAも導入。LIXILが友の会会員向けに始めたMAツールの提供を利用しました。今後、個々のお客様の動きに合わせた営業活動に活用していこうと思います。

サイトのトップページから「人」が感じられる。