北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)7月13日(月曜日)
アイ建築工房(帯広市)は現在の平屋ブーム以前から十勝地域で平屋のモデルハウスを集客の核として他社との差別化を図ってきた。20~30坪のコンパクトな平屋を「賃貸住宅の家賃並み」の月々の支払額で若い子育て世帯を中心に提案。その戦略が功を奏し、同地域で平屋を検討するユーザーはまず同社に相談に訪れるようなブランディングを成立させている。
しかし近年、大手ハウスメーカーをはじめ、十勝地域の地元工務店も平屋に力を入れ始め、明らかに注文住宅市場における平屋の比率は増えているという。同社の濵木幸浩専務は「地元の新聞の広告を見ても一目瞭然。昔は平屋を出しているのは当社ぐらいだったが、今は毎週1、2棟は必ず他社の平屋が載っている」と話す。

こうした他社の動向とは逆に、同社の昨年の受注物件の中で、平屋の比率は減少傾向だった。要因は資材価格の高騰にともなう住宅の高価格化。コンパクトな平屋のメインターゲットだったローコスト顧客層の所得水準では手が届かない価格帯となってしまい、比較的所得水準が高い顧客層にシフトしている。
例えば以前なら大手ハウスメーカーに行っていた所得水準の顧客層が同社で注文住宅を建てるとき、選択肢となるのは30坪以下の平屋ではなく、35坪ぐらいの2階建となることが多く、そのため同社の受注物件の1戸あたり平均床面積はむしろ増加しているという。
一般的に、同じ延床面積の住宅であれば建築コストは2階建より平屋の方が基礎や屋根の面積が大きくなる分、2割程度割高になるといわれる。ただ同社は平屋の提案をベースに価格設定をしているため、平屋と2階建の価格に差がない。平屋のインセンティブを打ち出すブランド戦略の一環だが、その分、企業努力によるコスト吸収が欠かせない。
建築コストを抑えるうえでもっとも重要なのは延床面積をできるだけ小さくすること。2階建だと階段や2階の廊下など居室以外のスペースが増えるが、平屋は賃貸アパートのように可能な限り無駄を省いた設計がポイントとなる。延床面積を5坪減らせば、例えば1坪あたり単価が60万円の住宅なら300万円のコスト削減になる。
若い一次取得層は元々ワンフロアの賃貸住宅での生活に慣れているので、無駄のない平屋の生活スタイルに馴染みやすい。濵木氏は「今後も30代子育て世帯の平屋需要は増えていくと思う」とみている。
同社ではいま、30坪ぐらいの3LDKが平均的なプランだという。子ども二人の世帯でも、主寝室1室に子ども部屋2室で十分に需要を満たす。無駄を省いた合理的なプラン、かつ比較的所得水準の高い層にも訴求できる必要十分な空間が、同社が提案する平屋のベストバランスとなっている。