北海道の家づくりデータベース
函館エリア版(渡島・檜山)
2026年(令和8年)7月13日(月曜日)
帯広市大空町3丁目の旧大空小学校跡地には現在、54区画の住宅地が整備され、ハウスメーカーや地元住宅会社などの新築工事が盛んに行われている。1月下旬から各社のモデルハウスが相次いでオープンし、見学会イベントも開催中。その中で興味深い出来事として、実は公開中のモデルハウスの多くで冷暖房をエアコン、給湯をエコキュート、調理をIHクッキングヒーターと、すべて電気で行うスマート電化が採用されている。若い子育て世帯の人気が高まりつつあるこの地域でなぜいまスマート電化が選ばれるのか、各社の事例を取材した。
大空エリアは1967年に帯広市が造成を開始し、80年のピーク時には2617世帯、人口9111人に達した。その後は減少が続き、2018年には2240世帯、人口は4325人と半分以下まで落ち込んだが、翌19年から再び増加に転じ、現在も緩やかな増加基調が続いている。
人口増の背景には、公有地の売却によって民間の宅地開発や共同住宅の建て替えが進んだことがある。市内は住宅用地不足で利便性の高い地域は土地価格の上昇も著しい。住宅の建築コストも高騰が続くいま、比較的安価でゆとりのある土地が確保できるこの地域に若い子育て世代が目を向けている。22年には大空小学校と大空中学校が統合して9年制の大空学園義務教育学校が開校。世代交代が進み、生まれ変わる同エリアの象徴的な存在となっている。
この統合によって大空小学校の校舎が取り壊され、跡地に誕生したのが大空町3丁目の「大空タウン」。宮坂建設工業グループの登寿ホールディングス(帯広市)などが公募型プロポーザルで市有地を取得し、54区画の宅地開発を行った。
かつては市中心部から離れた利便性の低い地域として目を向けなかったハウスメーカーや地元住宅会社も、市内の土地不足や土地・建物価格の高騰、そして若い世代が増えつつあるこの地域の将来性に注目し、積極的に分譲に参加している。ひと昔前までは古い住宅ばかりが目立っていた周辺地域も、この大空タウンを核として新しい住宅と子どもたちの姿が増えていく期待が膨らんでいる。

1月下旬に大空タウンのモデルハウス見学会イベントがスタートし、当初から公開された8棟のモデルハウスのうち、一条工務店(東京都)、太平ホーム北海道(札幌市)、土屋ホーム(同)、ロゴスホーム(帯広市)の4棟がスマート電化を採用。さらに総合設計(同)も別途、スマート電化のモデルハウスをオープンさせ、アイ建築工房(同)も現在公開中のモデルではないが、同じエリアでスマート電化の住宅を建築している。 これだけ多くのスマート電化が選ばれている理由として、十勝は日射量が全国でも有数の地域で、太陽光発電の効率が非常に良いということが挙げられる。帯広市は「とかち晴れ」という言葉もあるように年間日照時間が2000時間を超えることもある。年間日射地域区分はA3区分、暖房期の日射地域区分はH4区分に相当し、太陽光発電に適した条件の地域と言える。この好条件を生かさない手はない。 生み出した電気は電化設備で最大限に自家消費できる。この相乗効果こそが快適性と省エネ性を両立するスマート電化の利点であり、今回紹介する6社の中でも5社が太陽光発電と全館空調システムの組み合わせを採用している。 ハウスメーカーや大手ビルダーが先行してはいるが、地域の住宅会社でも太陽光発電の導入に前向きな声は徐々に増えつつある。一方で、冬の寒さが厳しい地域でもあり、エアコン暖房の全館空調システムには従来懐疑的な声が多かった。しかし断熱等級の上位等級創設以降、道内の住宅の断熱性能は加速度的に向上し、断熱等級6、UA値0・28以上を標準とする住宅会社も特別ではないいま、帯広や旭川、北見といった寒冷な地域でも全館空調システムの実績が増えてきている。
こうした変化を背景に、スマート電化が選ばれる土壌が固まりつつあると見ることができるだろう。なぜこれらの変化がスマート電化の普及につながるかといえば、一つは太陽光発電の自家消費を増やすのに最も適しているのがスマート電化だからだ。 かつての太陽光発電は売電目的が主流だったが、現在は売電単価が年々下落する一方、電気やガス、灯油などのエネルギー単価が総じて上昇基調で、発電した電気は自家消費するのが最も経済的メリットを生む。 発電した電気を貯めて夜間に使うには高額な蓄電池や電気自動車が必要だが、冷暖房、給湯、調理もすべて電気で行うスマート電化は昼間の自家消費も必然的に増える。中でも冷暖房を少ない消費エネルギーで常時運転する全館空調システムは太陽光発電の自家消費に効果的で、スマート電化とも相性がいい。 また、通常のエコキュートは割安な夜間の電気を使ってお湯を沸かすが、昼間に発電した電気を使ってお湯を沸かす「おひさまエコキュート」が自家消費を増やすのに役立つ。専用アプリで地域ごとの日射量予報データを取得し、発電量が多い時間帯に沸き上げを行ってさらに自家消費の効率を高める「日射量シフト」機能が付いた機種もある。寒冷地用の機種もラインアップされており、本道でも太陽光発電とスマート電化のメリットを最大化できる環境が整ってきている。 大空タウンでスマート電化を採用している各社はこうした優位性にいち早く注目し、将来的な光熱費の不安を軽減したい若い世代の心を掴む提案を行っている。次ページからは6社のスマート電化の事例を紹介し、各社のコンセプトと戦略の詳細について浮き彫りにする。