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《Anniversary》武部建設80周年

《Anniversary》武部建設80周年

建物の持つ価値をつないでいく

三笠市と岩見沢市に拠点を持つ武部建設が今年で創業80周年を迎える。高気密高断熱住宅の黎明期に木造住宅に取り組み、大工育成や民家再生など独自の視点から道内の住宅業界を牽引してきた。大工の伝統技能を守り育て、本来の工務店の姿を体現するという武部豊樹社長に、80年の道のりと今後の展望を聞いた。

武部氏の祖父にあたる創業者の武部豊次郎氏は、石川県能登半島から北海道に渡った入植者だった。武部建設は、記憶に新しい能登半島地震の際に、被災者に提供する木造応急仮設住宅建設のため自社の大工を派遣している。(一社)JBN・全国工務店協会(以下JBN)の要請を受けたものだが、ゆかりのある地に「格別な思い入れを持って取り組んだ」と武部氏は話す。
祖父は最初、夏は農業、冬は造材を行う林業に従事していたが、1946年に製材を手がける武部木工所を創業した。その延長にある事業として製材した木材を使って建物を建てるようになり、二代目の父、武部豊種氏が建設業に集約。主に「炭鉱の街」として栄えた三笠市の公共工事を請け負った。そして、83年に武部氏が三代目の社長に就任した。

適応力のある大工

同社の特徴は、自社大工の伝統技能を生かした木造住宅や民家再生と、道内でも先駆的に取り組んできた省エネ技術である。いずれも武部氏が会社を引き継いでから確立してきたものだ。
就任当時、国の石炭から石油へのエネルギー転換により、三笠市でも炭鉱の閉山が相次いでいた。武部氏は、これから公共工事は大変になると感じ、同時に、自ら提案した建物を建てたいという思いを強くしたそうだ。そこで造材から始まった自社の強みを生かそうと、木にこだわる木造住宅の建築へと舵を切った。
91年から新在来木造構法普及協議会(新在協、現在の新住協)に入会し、高気密高断熱住宅に取り組む。メーカー各社が断熱材などを次々と開発していた時代で、会員同士で切磋琢磨し、新しい工法や技術の習得に励んだ。ここから、同社が力を注ぐ「大工育成活動」へとつながっていく。
それまでの家づくりに無かった断熱材や気密シートの施工を担ったのは、棟梁クラスの大工たちだった。彼らは、ただ単に施工技術が高いだけでなく、家のどこが弱いか、強くするためにどうしたらいいか「構造力学」を経験から理解していた。
同様に高気密高断熱にするためには、熱がどのように移動するのか、気流はどう動くのか「熱力学」を理解する必要があるが、墨付け・手刻みができる大工はそれらの理解も早い。「大工の重要性をあらためて認識し、そういう大工を育てなければと思った」と武部氏は振り返る。
93年に木工場と大工作業場の改修・整備を始め、95年に第一期大工育成活動を開始。そうして長年にわたり、大工を正社員として雇用し、大工の育成に努めてきた。
2017年には「JBN大工育成ガイドライン」の策定にも携わった。育成の目的として、手刻みや墨付けができる伝統的大工技術を持った職人を掲げている。その腕があれば、プレカットから2×4工法、大規模改修までどんな現場にも適応できるからだ。

民家再生への試み

厚真町の古民家をリノベーションした「森のオーベルジュ 三(みつ)」

自社大工の技能の高さは、「民家再生」にも生かされる。2000年には、三笠事務所の敷地内に民家再生モデル住宅と古材ギャラリーを建築した。実績が評価され、19年に札幌市内の「北海道開拓の村」改修工事に参画。また、21年には「厚真町古民家再生プロポーザル事業」に採択された。
「初めて民家の改修をした時、当時の当社の新築住宅よりよっぽど優れているのではと思った」と武部氏は笑う。釘や金物を使っていないのに強靭な構造であり、木材も立派な広葉樹でまだまだ使える。これを取り壊すのはもったいない。また、伝統工法と現代の工法の違いを学ぶ良い機会にもなった。
「これからは新築より改修の時代になる」と武部氏はみている。民家再生を続けてきた経験が、今後さらに生かされるだろう。それは、断熱や耐震といった性能向上改修にとどまらない。なぜ、この建物を残すのか、歴史や背景まで見極めて改修の仕方を決める「ストーリーのある改修」を行うという。「技術だけで勝負すると価格競争に陥る。競争に勝つために付加価値による差別化を考えている」と続けた。

本来の工務店の姿

伝統的技能を持つ大工

武部氏は、「工務店とはなんだ?と誰かが問いかけたら、武部建設と言われるような工務店になりたい」と力を込める。工務店の定義に確立したものはないが、言葉で表現できなくても「本来の工務店」の要素は挙げられると説明。まず、作る場所は工場ではなく現場であること。作り方は企画段階から大工も含めた設計・施工で取り組むこと。そして作る人、つまり大工が社内にいることだ。ここでいう大工とは、墨付けのできる一級建築大工技能士レベルの大工のこと。 また、地域の人が働ける場所となり、社員が会社のある地域に住んでいることも大事な要素。少子高齢化で人口が減ってきている今、社員を雇用し、育成することが経営の大きな柱になる。 「大工育成も民家再生も本来の工務店の姿」として、「会社としては100年企業を目指し、建物の持つ価値を次代へつないでいきたい」と語った。

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