北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)6月10日(水曜日)

2日目は、工務店や設計事務所などを対象にした技術セミナーを札幌市内で開催した。
テーマは、「北海道におけるこれからの住宅仕様をWUFIシミュレーションから考える」。講師は、岐阜県立森林文化アカデミー教授の辻充孝氏。建築生物学と呼ばれるバウビオロギーの普及に取り組む日本バウビオロギー研究会の理事も務める。
辻氏は、建築物理の視点から北海道における熱と湿気の挙動について、シミュレーション結果を交えて解説した。建築における結露は、冬の表面・内部結露と、夏の表面・内部結露の4種類に分類される。北海道では伝統的に冬型結露への対策が重視されてきたが、近年の温暖化に伴い、本州と同様に夏型結露のリスクが高まっている。
辻氏は、これからの住宅設計には「非定常計算」が不可欠であると説いた。従来のU値計算などの定常計算では、1日の中で大きく変化する日射や湿度の影響を正確に把握できないからだ。
非定常熱湿気同時移動解析ソフト「WUFI」を用いることで、断熱材の熱容量や調湿性能が、時間の経過とともに構造体へどのような影響を与えるかを可視化できると強調した。WUFIは、ドイツ・フラウンホーファー建築物理研究所で開発された計算ツールで、世界的に高く評価されている。
とくに注視すべきは夏型内部結露だ。夏季、日射により屋根や壁の温度が60度以上に達すると、構造材に含まれる水分が水蒸気となって放出される。この湿気が室内側へ移動する際、冷房で冷やされた石膏ボードの裏面などで結露が発生する。
シミュレーションの結果、ウッドファイバーやセルロースファイバーのように熱容量の大きい断熱材は、日中の熱が室内に伝わる時間を遅らせる効果があることが示された。辻氏は、対策の一つとして調湿性のある木質繊維断熱材「シュタイコ」などの活用を提示。ドイツ生まれのシュタイコは、高い透湿性と吸放湿性能を持ち、壁体内の湿度を調整する機能がある。
また、冬は防湿し、夏は湿気を通す「可変透湿気密シート」の活用や、防湿ラインを断熱層の中間に配置する手法も、夏型結露を抑制する有効な選択肢となると話した。
実際に武部建設の仕様を例として取り上げ、検証を行った。壁は高性能グラスウール16K相当を内側と付加断熱にそれぞれ105㎜施工したもので、辻氏の計算によると壁のU値は0.19だった。
非定常計算において、冬の壁内の湿度は60~70%くらいで安定しており、結露はほぼないということが裏付けられた。夏も80%を超えることはほぼなく、この仕様で問題ないことが分かった。
さらに辻氏は、断熱材の種類や防湿シートの違いになどにより16パターンの壁面をシミュレーション。それぞれの結果について解説し、夏型結露対策として調湿効果のある断熱材を使うことはやはり有効と結論づけた。
講義の後にディスカッションが行われ、参加者から冷房のない住宅での可変透湿シートの影響について質問が出た。辻教授は、冷房がない場合は結露リスクが低いものの、将来的なライフスタイルの変化を見据えた構成が大切と回答した。
今後の課題として、コストと性能のバランスや、地域ごとの気候特性に応じた最適な仕様選定が挙げられた。辻教授は、設計者が自身のスタイルを持ちつつ、複数の選択肢を使い分けることの必要性を強調した。
講義に続いて、ウルトジャパンが商品ピーアールを行った。同社はドイツ・ウルト社の製品を日本で展開し、建築分野では透湿防水シートに定評がある。
また、イケダコーポレーションは、同社が取り扱うシュタイコについて説明。同社はエコロジー建材専門商社として、エコロジー先進国であるドイツやスイスなどから建材を輸入、販売している。断熱材における木質繊維系のシェアは日本では1%程度だが、ヨーロッパではスタンダードである現状を訴求した。