北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)5月24日(日曜日)

進行
ソトダン21会長 高橋広明氏
北海道科学大名誉教授 福島明氏
パネリスト
道立総合研究機構建築研究本部北方建築総合研究所建築研究部長 廣田誠一氏
メディア4社の講師
三浦氏、白井氏、郡司氏、三木氏
質問 今年もこれまでと同じような考えでやっていけるのか、いよいよ変化していかないといけないのか。
三浦 本音を言うと、下りのエスカレーターに乗っているのは苦しい。新築注文住宅だけみると、数字上は下りだと感じる。ただ、いい家を求める顧客層はあるので、そこで踏みとどまっていくことは可能。
今日の話のように、上りのエスカレーターもまだまだある。中古リフォームなのか、性能向上改修なのか、自分で探しながら需要を創造していくことはできる。下りに踏みとどまるか、上りを作っていくかは経営者の価値判断次第。
髙橋 北海道でリフォーム・リノベーション事業を行うノウハウや、今後の市場拡大について、本日会場に参加しているアルティザン建築工房の新谷(孝秀)社長に聞きたい。
新谷 ただのリノベではなく性能向上している。UA値もかなり上げ、耐震も直す。新築と同じか、それ以上のものを作ろうとしていると、信じられないかもしれないがユーザーがいる。
コロナ前は2ヵ月で700人ぐらい集客があった。いまも50人ぐらい来る。性能向上をちゃんとやっていると常にユーザーはいる。新築だけが建築ではない。必ずリフォームにシフトしなければいけない時期が来る。
髙橋 北海道のリフォーム・リノベーションの可能性について、道しるべとなるような事例はあるか。
三浦 いきなり新谷さんのようになれるわけではないが、全国の成功事例をみると新築と中古、リノベーションを並列で提案できている会社は強いと感じる。新築をずっとやってきた工務店なら中古を年間1、2棟ぐらいから始めると気が楽かと思う。
それと、中古でもこんなに性能が上がると理解してもらえる場があるのは強い。体感・売却型モデルハウスでユーザーに価値を理解してもらうことも非常に大事。価値の伝え方について新谷さんから何かヒントがあれば。
新谷 でき上がったものだけ見ると新築と同じなので、改修前の様子は写真で見せるようにする。この中古住宅がこうなりましたというのを見て、感じてもらうのが大事。
実際にリノベした家に入って冬の温かさや夏の涼しさを感じてもらう。その際、一つひとつ説明して理解を得るためのフォームを作っておく必要もある。話を聞きに来ていきなり顧客になるわけではない。何回か会ってファンになってもらうと、話が通じるようになる。
髙橋 会場に参加している藤城建設の藤城(英明)社長から、パネル化工法や壁面太陽光パネルのノウハウを聞きたい。
藤城 木造軸組の大型パネル化をやってみたくて、見積もりを取ったら普通に建てるより250万円ぐらい余分にコストがかかる。それで地元のプレカット工場やパネル工場と協力し、自社でやってみたら、コスト増を130万円まで減らせた。さらに工法的に速さを生かせるように見直し、50万円まで減らせた。これでようやく先が見えた。
いまはそこで止まっているが、ノウハウは持っている。大工さんが深刻に少なくなってきた時には、そういうことが普通に行われていく。
太陽光発電の壁面パネルはもう6、7年ぐらい前に建てた住宅で、壁面と屋根を合わせて14kWぐらいのパネルを載せたら見事に冬場の発電が得られ、顧客に喜ばれた。
次に新しいモデルハウスを計画したとき、冷暖房をエアコンだけにして、壁面太陽光発電だけで年間すべてまかない、プラスが出た。施工は自社の社員だけで行っている。壁面でも年間で屋根の8割ぐらいは発電するので無駄にはならない。
これだけエネルギーが高騰してきて、環境の問題だけでなく自分たちの顧客の購買力を失わないためにも、やはり自家発電が必須になってくると思う。住宅も車も太陽光発電だけで動く時代が、もう近いかもしれない。
質問 太陽光発電が広まるために必要な発信とは。
三浦 義務化にはすごく賛成。東京都の義務化はすべての住宅が対象ではないが、義務化という強い言葉で賛否両論が起きたのはよかった。反対派で声が大きい人もいて、まだまだ誤解されているが、日本ではやはり規制緩和の真逆をやるのが一番手っ取り早い。
北海道でも壁面パネルで義務化に近付いていければそうしていくべき。電気のように使ってなくなるものにお金を使うより、形に残ってずっと金の卵を産む太陽光パネルにお金を使った方が圧倒的に合理的。そのことと一緒に義務化を伝えていけるかどうか。
郡司 北海道の工務店は断熱・気密をずっと研究してきたが、設備についてはわかっていない工務店も多く、勉強しなければいけない。省エネ基準適合義務化を前に、一次エネルギー消費量の計算がまだできない工務店も今後、やはり勉強が必要。そのうえで太陽光パネルを載せるかどうかを考える必要がある。 北海道には多くの工務店団体があり、情報を共有しているのは素晴らしいこと。お互いに切磋琢磨しながら、顧客に喜ばれる住宅を建ててもらいたい。
三木 道の民間住宅施策推進会議に参加し、北方型住宅の脱炭素化について議論してきたが、温暖地と寒冷地では基準が違うべきで、国策では難しいという声が多かった。できる部分はやるが、できない部分もある。それをポイント制という形で公平に評価する北方型住宅ZEROの仕組みは素晴らしい。
太陽光パネルを壁面設置するとしても集住地では難しいし、それぞれの事情に合わせて取り組んでいくというのが今のところの結論ではないか。
白井 講演でも話した通り、断熱等級6プラスPVだと思う。断熱とPV、どちらかを北海道で義務化するとしたらまず断熱。ただ、PVに対してはもう少し積極的であるべきではないか。
ZEHを推進している工務店の話を聞くと、よそで断られた顧客がけっこう来るという。せっかくZEHに興味がある顧客が来ても、それを捨ててしまっている面がある。PV推進のために何が必要かと言えば、たぶん「安心」「大丈夫です」という一言だと思う。
廣田 PVに関してはいろいろな考え方があると思う。道も北総研も同じだが、北海道に適した創エネや省エネがないか広く検討していく中で、PVもその一つという位置付け。現実的にコストや収支を考えるとPVが有利ということは確かだが、将来的なインフラとして本当にPVがいいのか。いろいろ意見があり、北海道に何が適しているのか、技術開発も含めて検討していけたら。
福島 北海道の住宅は本州とまったく違う形になってきている。みんなフラット屋根。これは大きな特徴で、とても面白い。
四角い家に合うPVとは何かというと、フラットに置くこと。雪が降ったら埋まってしまうが、一年を通せばすごい量を発電する。余った分を外に売ればいいだけ。それが一番安くて誰でもできる。中古住宅にもみんな載せられる。
みんな壁面パネルの話ばかりするが、屋根にフラットに載せればいいと思う。耐力的にも耐えられるパネルになってきたし、架台もいらない。
自分の専門ではないが、普及していくのは大変いいことで、専門の人たちが技術的にいかに安くしていくかというのは期待している。