北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)5月24日(日曜日)

山野内建設(渡島管内八雲町)は、高性能なZEHの戸建注文住宅や賃貸集合住宅を集めた「ZEHタウン」を地元・八雲町で拡大していこうとプロジェクトを進めている。すでに同町の住初町で賃貸集合住宅1棟が完成し、供用開始しており、隣接地に戸建注文住宅2棟も建築中。住戸ごとに寒冷地用暖房エアコン1台で快適な室温を保つ全館空調システム、ヒートポンプ機器で消費エネルギーを削減するスマート電化、そして大容量の太陽光発電設備により、光熱費の心配がいらない暮らしを町全体に広げるのが山野内辰男社長の構想だ。

戸建注文住宅の内観
昨年11月、12月にはZEHタウンで戸建注文住宅2棟の現場見学会と賃貸集合住宅の完成見学会が開かれた。建築中の戸建注文住宅2棟はどちらも平屋で、外皮の仕様は同じ。C値は両棟とも0.3。UA値は床面積の違いなどにより若干異なるが、一方は0.22、もう一方も0.23と、断熱等級7に近い6に相当する。
外壁はツーバイフォーの壁厚90㎜に高性能グラスウールを充填。付加断熱でフェノールフォーム111㎜を外張りしている。基礎断熱は押出法ポリスチレンフォーム100㎜を立ち上がり部分の内外両側に張り、スカート断熱を施工。天井はセルロースファイバー400㎜吹き込み。窓はすべてトリプルガラス樹脂サッシを使用している。
設備も両棟共通で、換気は全熱交換式の第1種熱交換換気システム。暖房は床下に設置したルームエアコン1台によるオリジナル設計の全館空調システムで行う。給湯はエコキュート、調理はIHクッキングヒーターを採用。ヒートポンプ機器をフル活用して消費エネルギーを削減する「スマート電化」住宅だ。
両棟とも片流れの大屋根に発電容量10kWを大きく上回る太陽光発電パネルを設置しており、パワーコンディショナの容量9.9kWを最大限に活用できるため、発電している時間帯は電化設備の消費電力を賄い、余った電気は売電して年間の光熱費と相殺する。
エネルギーを効率よく使うことを考え尽くし、ユーザーに暮らしのコスト負担を感じさせないことが同社の住宅づくりのモットーだ。

完成と同時に満室の賃貸集合住宅
完成した賃貸集合住宅は1LDK6戸の木造2階建。戸建とほぼ同じ仕様だが、外皮面積が大きいため付加断熱は押出法ポリスチレンフォーム100㎜に変更。再エネを含む一次エネルギー消費量削減率が75%以上のニアリーZEHに相当する。
太陽光発電は発電容量27・59kWのパネルを設置し、容量9.9kWのパワーコンディショナ3台を使用している。電気は住戸ごとではなく物件オーナーが一括で契約し、売電収入はオーナーに入る。同社の試算によると、年間の予想発電量約3万kWのうち、約2万4000kWが売電に充てられ、予定売電単価を1kW当たり12円とすると、年間約29万円の売電収入が得られる。入居者の電気料金は家賃に含まれており、定額で使える。エアコンを常時つけたままにして、外出先から帰ってきてもいつでも暖かい暮らしが賃貸でも可能になる。
電気料金の他、水道、インターネット、駐車場の料金もすべて含めたオールインワンの家賃は月額8万5000円。同町の1LDKの家賃相場は6万~6万5000円ぐらいだが、暮らしにかかる基本的なコストの大部分が一つにまとまり、定額使い放題という安心感が好評で、まだ建設中のうちから全室の入居者が決まっていたという。
同社はこれまでに19棟のZEHアパートを建設し、そのうち15棟が八雲町にあるが、そのすべてが現在満室。新幹線の札幌延伸工事の特需もあるが、特需が終わっても電気料金で他の物件にはない独自の強みがあるため競争力は維持される。
今回のZEHタウンの物件は土地代と建設費合わせて約7000万円で、利回りは約6%。最も利回りがいい1DK10戸タイプは8~9%。地元のオーナーもいるが、道外のオーナーが1棟建てて運用状況に満足し、2棟目、3棟目を建てるケースも多いという。

八雲町役場近くの好立地にZEHタウンの表示
同社は2017年から「全棟ZEH宣言」を掲げ、太陽光発電を導入した高性能なスマート電化住宅に特化した住宅づくりを続けている。今回の八雲ZEHタウンで目指したのは「次世代に引き継ぐ100年住宅」。
エネルギー価格や物価が高騰し、暮らしの不安が年々高まる時代の中で、光熱費の心配をせずに快適に暮らせる家があれば、家族がずっと地元に住み続けることができ、良質な住宅が世代を超えて引き継がれていく。賃貸でも豊かに暮らせるZEHアパートが町内に普及すれば、他地域から人が集まる町の魅力になる。住環境の充実を通じた地域の活性化がZEHタウン構想の出発点となっている。
3月にも4棟の賃貸集合住宅を集めたZEHタウン2が着工予定。同社の住宅づくりが町全体に省エネな暮らしを広げていく。