北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)4月7日(火曜日)

新型コロナウイルス感染症による影響は先行きが見えない今、住宅業界では見学会などイベントの自粛が相次いでいる。個人の接触まで制限される状況が続き、これから顧客とのつながりをどう作っていけばいいのか考えている住宅会社は多いだろう。こうしたなかで、顧客とのコミュニケーションのための新たなWEB活用に注目が集まっている。自社のアピールよりもファン作りを目指してWEB活用に取り組んでいる2つの道内ビルダーに話を聞いた。
スマホで撮影 そのまま生配信
ウッディークラフト(中標津町)は、今年2月からSNSのインスタグラムアプリを使ったライブ配信(通称インスタライブ)を行っている。 インスタライブは、スマートフォンで撮影している動画をそのまま生配信するシステムで、インスタグラムのアカウントとスマートフォンがあれば誰でも無料で利用できる。視聴者はライブ中にコメントを送ることができ、配信者がそれに応えることで双方向のコミュニケーションも可能だ。 同社では、この3ヵ月間で6〜7回のインスタライブを配信した。内容は、モデルハウスの紹介と「お家づくり相談会」。担当した同社のホームアドバイザー主任、宇津木智崇氏は、「ライブ配信のきっかけは、新型コロナウイルス感染症への対策で、2月に予定していた完成見学会が中止になったこと」と話す。 「何か代わりになることができないだろうかと話しあった。ライブ配信なら、お客様を実際に案内するように当社のモデルハウスを紹介できると思った」 宇津木氏にはそれまで動画配信の経験はなかったが、とにかくやってみたところ「結構できると手応えを感じた」という。

配信は2部構成。1部の「モデルハウスのご紹介・ご案内」では、スタッフ2人がカメラ担当と案内担当に分かれ、カメラ担当が撮影しながら質問を投げかけ、それに案内担当が答えながらモデルハウスの中を順に回るというスタイル。2部の「お家づくり相談会」では、営業スタッフ2人が固定したスマホの前で、トークショーのように掛け合いながら家づくりの質問に答えていった。
質問は、事前にインスタグラムで募集する。直近の4月11日に行ったインスタライブでは、「家を建てるのにいくらくらいかかるのか」「頭金の用意は」といった予算の質問が多かったそうだ。
配信時間は1部と2部でそれぞれ約50分(インスタライブは1回につき上限1時間まで)ずつ。視聴者は面識のない人から同社のOB施主まで様々だ。
ライブ配信を行うにあたって宇津木氏は、「視聴者が飽きないように工夫することを心がけている」という。長時間のライブでは、ただ淡々と説明するだけでは見ている方が飽きてしまい、視聴をやめてしまうだろう。 「自分の家ではこのようにしているなど、リアルな体験をおもしろく話すようにしている。例えば書斎の棚に置きたいものは?と聞かれて、趣味のギターを飾ると答えたり、プライベートな話題を混ぜて話したりすると親近感を持ってもらえる」 インスタライブは、各支店の営業スタッフがそれぞれ配信している。お互いに話し方や撮影の仕方などについて、意見を交換しながら切磋琢磨している。 「新型コロナの影響でリアルなイベントの開催が難しくなった。今は集客や成約より、ファン作りに力を注ぐ時だと思う」と現実を見据えながら、「インスタライブをイベントとしてお客様に参加してもらい、会社やスタッフのことを知って好きになってもらえれば。新型コロナが終息したら、モデルハウスを見に来たり、スタッフに相談しに来たりしてくれたらうれしい」と話す。 そのためには、何より継続することが大切。宇津木氏は「家に関する情報はもちろん、今後は遊びの情報も配信していきたいと思っている。お客様にもっと楽しんでほしい」と意欲的だ。
同社は、ライブ配信と同時期に「オンラインお家づくり相談会」を開始した。新型コロナウイルス感染症対策の一環で、「釧路管内での感染者が公表され始め、お客様から『打ち合わせを延期したい』と言われたことがきっかけになった」と宇津木氏。 既存の顧客だけではなく、新規の顧客にも無料で対応する。自社ホームページ内に予約フォームを設け、顧客の希望の時間帯にスマホやパソコンを使って個別相談を行う。通話方法はチャットワークやハングアウト、ZOOMなど顧客の好みで選択できるようにした。 きっかけは新型コロナだが、宇津木氏は終息後もWEB上でのやり取りは定着すると見る。「道東は施工エリアが広いので、オンライン打ち合わせが普及すれば仕事の効率化にもプラスになる。お客様にとっては自宅から気軽に相談できることも利用しやすさにつながると思う」。 今後はデジタルが苦手な顧客のために、オンライン打ち合わせが簡単に行えるようにインターネットを設定済みのタブレット端末を貸し出すことも検討しているという。 WEBの活用には、顧客の使いやすさを思う目線が大切だ。
「職人」のかっこよさを見せる
イネスホーム(札幌市)は、今年5月下旬に動画共有サービスYou Tubeで「イネスチャンネル」を開設する準備を進めている。 配信する動画を自ら制作している同社の営業部課長、村田豪氏は、「最初に作ったのは、大工の建て方の動画。建築現場を俯瞰して、1日目の土台づくりから4日目の屋根の組立てまで、軸組が完成する様子をタイムラプスで撮影した」と話す。

タイムラプスは、一定の間隔で撮影した写真をつなげて再生することで、コマ送り動画のように見せる撮影方法。ハイスピードで情景が変化していくため、被写体の時間経過をコミカルに、あるいはドラマチックに記録することができる。タイムラプス機能が搭載されているスマートフォンがあれば手軽に制作可能だ。
タイムラプスを選んだ理由を村田氏は、「動きがおもしろくなるから。楽しくなければ視聴してもらえないと思った」。2人の大工が通常ありえない速さで動き、あっという間に家の軸組ができあがっていく様子は、確かに見ていて楽しい。
撮影方法については、「現場は、イネスホームの新しいモデルハウス。隣は元々あるモデルハウスなので、そこから現場全体を見渡すことができた。三脚を立ててスマホを固定し、朝8時にスイッチを押して撮影を開始。そのまま置きっぱなしにして、夕方4時に止めに行き終了。これを4日間繰り返した」。カメラが勝手に撮影してくれるのでほとんど手間がかからない。編集はスマホの画像加工アプリを使い、スマホ1台で作業が完結する。時間をあまりかけず、仕事の合間に仕上げることができたという。
イネスチャンネルの開設は、村田氏の発案だ。構想は去年から温めていたという。「5G(第5世代移動通信システム)が始まるし、当社でも動画を活用できないかと考えた。以前からモノを作る職人の姿がかっこいいと思っていたので、それを動画にして多くの人に見てもらいたいと思った」。 現場の専属大工の人たちも協力してくれた。「タイムラプスで良かったのは、顔が画面にはっきり出ないところ。職人さんは顔が映ると嫌がるが、タイムラプスの動画を見せると快く撮影に応じてくれた」。 動きもテキパキとしてかっこいい。モデルになった大工は、家族に見せたいと言ってくれたそうだ。 村田氏は、日本FP協会の2019年調査で「小学生がなりたい職業ランキング」に大工が男子の部で6位に入ったことを挙げ、「多くの子どもたちに職人の働く姿を見てほしい」と将来の担い手にも期待する。 また、商談中の顧客にも動画を見せたところ、「作業手順がわかりやすい」という声が聞かれ、評判は上々だった。商談中に飲み物を用意したり、資料を取りに席を外したり、ちょっとした空き時間を埋めるため、「ご覧になっていてください」と言えるのも営業にとっては便利だ。 大工の建て方の動画の後に、クロス貼りの動画も作った。「設備や左官など様々な職人たちの現場を動画にしていきたい。そして、動画を見たお客様が『この職人に頼みたい』と思ってくれたら、何より職人もうれしいと思う」と話す。
初めての動画作りは、たまたま新型コロナウイルス感染症の流行と重なった。「外出自粛や在宅勤務などでインターネットを視聴する人が増えたと聞く。空いた時間などに楽しんでもらえれば」と村田氏。今後の展開としては、「イネスチャンネルが開設されて軌道に乗ったら、今度はスタッフそれぞれが自分の仕事を動画にしてほしいと思っている。すでに制作したコーディネーターの『カーテン選びの打ち合わせ』のように」。 顧客にとって家づくりは分からないことが多いが、動画で見せると格段に理解しやすくなるだろう。このような雰囲気で商談が進められると知ると顧客にとっても安心感につながる。 職人シリーズと顧客のためになる家づくり動画。そのチャンネル開設が待ち遠しい。