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【特集】北海道の全館空調①

道内4社の事例から見た導入メリット

(独法)統計センターのオーダーメード集計によると23年3月の国の消費動向調査における道内のルームエアコン普及率は40.3%。巷間言われている通り、本道でも急速にエアコンの普及が進んでいる。これまで冬の暖房効率だけに注視してきた本道の家づくりも、今後は同様に冷房効率まで含めて考えていく必要がある。そこで近年、本道でもにわかに関心を集めているのが全館空調。本州とは異なる気候条件下でどこまでのメリットが得られるのか。実際に取り組んでいる道内住宅会社の導入事例を集め、今後の全館空調ブームの行方を探った。

エアコン普及率4割超え 夏の冷房効率が課題に

今年4月、全館空調システム「Z空調」を搭載した道内初のモデルハウス「桧家住宅 札幌森林公園展示場」が北海道マイホームセンター札幌森林公園駅前会場にオープンした。この秋にも札幌市内でさらに2ヵ所の総合展示場に出展する予定で、道内での販売活動を本格化させている。
Z空調は桧家住宅などヒノキヤグループ(東京都)の住宅ブランドを中心に全国で展開している全館空調システム。高額なイメージが根強い全館空調システムを独自のノウハウにより比較的低コストで提供し、積極的な広告展開も後押しして2016年から7年間で2万6000棟の販売実績を上げている。
21年から札幌市内の実験棟でエアコン暖房の実証試験を行い、真冬の寒冷地でも十分な室温を確保できるという技術的知見を得て本道への展開に踏み切った。
ヒノキヤグループの住宅ブランドだけではなく、全国のビルダー・工務店へのフランチャイズ展開を図っており、道内では8月時点で建成ホーム(苫小牧市)、ジョンソンホームズ(札幌市)の2社が名を連ねている。
全国的な知名度のある全館空調システムの本道上陸と、道内の地域有力ビルダーのフランチャイズ参加は、近年、本州でにわかに騒がしくなってきた「全館空調ブーム」が本道に飛び火したと考えられるのか、道内の現状を取材した。

■道内も高温多湿化

北海道住宅通信社が集計している全道建築確認ランキングで上位を占めている住宅会社のうち、本州系大手はそれぞれ全館空調システムをオプションとしてラインアップしているが、いずれも北海道向けの商品ではない。一方、地場大手のロゴスホーム、土屋ホーム、そしてZ空調に加盟したジョンソンホームズなどは道内のユーザーに全館空調システムを提供できる体制を整えている。いずれも道内で実績がある、もしくは道内で運用可能な技術的検証済みのシステムを採用するもので、現状のニーズへの対応というより、近い将来、道内でも全館空調がスタンダード化していく可能性を見通した動きと言えそうだ。
各社が全館空調への対応を進める理由は本州と同様、本道でも近年著しい夏の暑さへの対策だ。例えば気象庁のデータで札幌市の直近5年間の夏の気温の推移を見ると、7~9月の3ヵ月間の平均気温は19年の21.2度に対して23年は24度と約3度も高い。
一日の最高気温の平均も同様に19年の25.5度から21年は26.4度、23年は28.1度と上昇傾向が続いている。平均湿度は19年の75%から23年の77%と、多湿化も進む。10年前の14年には70%だった。
高温多湿化に伴って、道内でも急速にエアコンの普及が進んでいる。総務省統計局が行った14年の全国消費実態調査では、道内のルームエアコンの普及率は26.6%。常に90%前後で推移している全国平均とは大きな隔たりがあった。
その後、調査項目の変更により都道府県別のエアコン普及率は公開されていなかったが、北海道住宅通信社は統計法に基づいてオーダーメード集計を行う(独法)統計センターに依頼して、内閣府の消費動向調査で毎年3月に発表される主要耐久消費財等の普及率を基に19年から23年までの直近5年間の道内のルームエアコン普及率を確認した。
その結果、19年3月は23.8%と14年調査からほぼ変わっていないが、20年3月には36.4%、21年3月には43.8%と急上昇している。抽出調査で調査対象のばらつきがあるため、直近の23年3月は40.3%とやや減少したが、道内世帯の4割以上にエアコンが普及していることがわかる。

■全館空調が主流に?

本州の温暖地では部屋ごとにエアコンがあるのが普通で、必需品と言ってもいいが、近年、カーボンニュートラルに向けたエネルギー削減の流れの中で、部屋ごとに必要に応じて強い冷房を入れたり切ったりするよりも家全体を一定の温度に保つように弱冷房を連続運転し続ける方がエネルギー効率がいいという考え方が主流になった。つまり全館空調は一過性のブームというより、今後の空調方式の主流になっていくと予想されており、だからこそ今、急速に普及が進んでいると言える。
本道でも冬は同じような経過をたどり、住宅の高気密・高断熱化が進んだ結果、部屋ごとに暖房しなくても家全体を一定の温度に保てる全館暖房方式が普及してきた。
しかし、近年の高温多湿化により、そこに冷房の問題が加わってきた。リビングにエアコンを設置しても寝室は寝苦しい。暖房は効率化されているが冷房は各室で行うのか、それとも冷暖房ともに効率化して全館空調とするのか。道内の地場大手や各地域の有力ビルダーなどが今、率先してそこに注目している。

■これからのニーズ

今特集では実際にさまざまな全館空調システムを採用している地場ビルダーや工務店に取材し、ユーザーの反応を聞いているが、最初から全館空調を家づくりの優先事項に考えているユーザーはまだ少ないという。
似て非なるさまざまなシステムが登場し、全館空調という言葉の定義が定まっていないため、ユーザーが中身をよく理解していない側面もある。しかし住宅会社がメリットをわかりやすく説明して理解が深まれば、他社との大きな差別化となり、受注の決め手となる例もある。
今後さらに全館空調のメリットがユーザーに浸透し、一般化していくのは、少なくとも本州においてはそう遠い話ではなさそうだ。本道のユーザーがそれに追いついてきた時、住宅会社は新しいニーズに対応できるのか、逆に全館空調のエネルギー効率が本州と本道では異なることを説明して別の方法を提案するのか。どちらにしても全館空調に対する正しい理解は欠かせない。

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