北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)8月24日(月曜日)
やまもくは、受注や問い合わせ数を安定的に維持し、若手社員の採用にも成功している。同社の山口雄大社長は、先日開かれた「2026年度やまもく協力業者会」で、その原動力がデザイン経営にあると語った。デザイン経営を推進する経産省からも注目されており、当日は道経済産業局知的財産室長の早乙女愛佳氏らが出席した。

山口社長
山口氏は既存事業の改善と新たな価値創造を両立させる「両利きの経営」の重要性を説いた。その基盤となるのがデザイン経営である。山口氏は「おしゃれな会社をつくることではない」と前置きし、「見た目ももちろん大切だが、中身もデザインしなければならない。会社そのものを設計していくことだと思っている」と提起した。 山口氏がこの戦略へシフトしたのは7年ほど前だったが、その時はこの言葉を知らなかったという。07年に家業のやまもくを継いだ当時、住宅業界では売り上げやノルマのために値引きを伴う受注を重ね、結果として現場の負担やクレームを生むという悪循環がみられた。本来、工務店の仕事は顧客に喜ばれ、感謝されるものであるはず。その考え方が、後のリ・ブランディングにつながった。 デザイン経営で大切なのは、自社の軸を決めること。やまもくは、「本物を追求する家づくり」を掲げた。どんな家を作るのか、どんな顧客に来てもらいたいか、どんな会社にするか、すべてを貫くストーリーを構築。それが結果的にデザイン経営と重なることになった。 初回面談では約2時間かけて会社の考え方を説明し、まず共感してもらうことを重視するようにした。価格ではなく価値で選ばれる会社を目指した結果、今では顧客の8割が最初から「やまもくで建てたい」と相談に来るようになったという。
「全国を見ても今伸びている工務店は、ストーリーを持ち、人を生かしていると感じている」と山口氏。リーダーが自らストーリーを語り、そのストーリーが人々を衝き動かし、現場では日常的にストーリーが語られる。やまもくで言うと、性能もデザインも保証もすべていいものにするということ。「本物を提供する」、その家づくりのストーリーが人を惹きつけている。 そうして、顧客がショールームに来て、「やっぱりホームページと同じ感じで、雰囲気がいい」と思ってもらえる。スタッフの印象も「やまもくらしい」と言われる。現場に行くと現場監督や大工にまで、同じ感想を持ってもらえる。「一連の流れに一貫性がある会社づくりが大事」と山口氏は強調する。 また、デザイン経営における重要な要素が、意匠性と住宅性能の両輪を融合させることだ。 デザイン面において、同社は独自のデザインコードを定めている。 これは、「北欧風」「和モダン」「ジャパンディ」など顧客が求める多様なテイストに対応しつつも、間接照明の配置やノイズレスな空間構成など、どの住宅にも共通する「やまもくらしさ」をルール化したものである。これにより、デザインの方向性が逸れることなく、安定した意匠性を確保できる。 この洗練された空間デザインを支えるのが、客観的な住宅性能の提示である。同社はLIXILのスーパーウォール工法を標準採用しているが、今年3月から断熱材の60年無結露保証が開始された。UA値は0.21前後、C値はおおよそ0.1とし、耐震等級3を取得するなど、確かなエビデンスがある。
デザイン経営によるブランディングの効果は、顧客獲得だけでなく人材採用にも波及している。建築業界において採用難が深刻化する中で、昨年は求人広告費をほぼかけることなく、自社サイトの採用ページ経由だけで17人もの応募があったそうだ。20〜30代の新卒、第二新卒が多く、同社の理念に共感した3人がこの春新たに入社した。 また、組織のあり方として「働き方」そのものも一貫性を持ってデザインしている。2〜3年前から就業環境を見直し、年間休日を105日から120日へ切り替え、完全水日定休を導入。有給休暇は前日申請でも取得可能とした。「休みを増やせば生産性が下がる」という一般的な懸念に対し、改革後の方がかえって業績や利益率は向上しているという。 「顧客を幸せにするためには、まず現場を支える社員が幸せでなければならない」という経営思想が、組織デザインの根底に流れている。

今年の新入社員を紹介
同社のデザイン経営は、引き渡し後の施主(オーナー)や地域社会との関係性においても一貫している。 その好例が、「オーナー様宅訪問見学会」だ。実際に暮らしているオーナーの自宅を見込み客が訪問し、オーナー自身がリアルな住み心地や性能の高さを直接説明する仕組みが定着。また、地域イベントも施主や地域住民とともに作り上げるなど、「会社のファン」が新たな顧客を呼ぶ循環が生まれている。 山口氏は、今後の展開として大相続時代を見据えた実家リノベーションや、住まいの一部分を刷新する「グッドバリューリフォーム(部分リノベ)」の強化、さらに若年層や平屋需要に対応する1棟500万円の高性能コンテナハウスの提携販売など、市場動向を見据えた新しい事業を打ち出した。 山口氏は、「この先150年、200年と受け継がれるように、北海道で一番やりがいのある会社を作る」と語った。