北海道の家づくりデータベース
札幌エリア版(石狩・空知・後志)
2026年(令和8年)6月26日(金曜日)

アイ工務店(大阪市)は7月29日、札幌市内の総合住宅展示場、北海道マイホームセンターの北会場と森林公園駅前会場の2ヵ所に道内初となるモデルハウスを同時オープンした。今後は札幌会場のほか、苫小牧、函館、旭川の3市にもモデルハウスを建設する予定で、将来は帯広市にも営業エリアを拡大する計画。道内の気候に合わせて開発した戸建住宅商品「N-ees+S(ニーズプラスエス)」を全道展開し、3年後に300棟の注文住宅の受注を目指す。全国展開する大手住宅会社の道内進出に業界の注目が集まっている。同社の今後の営業戦略等について取材した。
東北以南で年間約5000棟の木造戸建注文住宅を販売するアイ工務店が道内に初めて進出した。戸建需要が低迷する厳しい市況の中で、同社は道内でどのように事業を展開していくのか。 斎藤隆輔取締役は「戸建住宅の着工戸数が減少しても、道内は福岡県や兵庫県に比べマーケットは大きい。商機は十分にある」と言い切る。 常長雅人北海道支社長は年間受注棟数について「3年後までに300棟」との目標を明らかにした。建築確認戸数が300棟と仮定すると、2022年の全道の戸建注文住宅のランキングで6位にランクされる(北海道住宅通信社調べ)。 同社は昨年から道内の市場調査を進め、出展する住宅展示場を探してきた。中央区のビル内に準備室を開設したのが今年4月。社員の採用が順調に進み、現在は営業、設計、工事担当を合わせて約40人が新天地で働いている。年内に50人(うち営業30人)に増やす目途が立っており、札幌市豊平区に取得したビルに来春にも北海道支社を移転し、ショールームを併設した「アイスタジオ札幌」をオープンする予定だ。 現在の社員の年齢層は30代が最も多い。支店長以下は原則として転勤がなく、「所長クラスに頑張って支店長に昇進してもらいたい」(斎藤氏)と期待を寄せる。 同社は2010年7月に創業。23年6月期の売上高は1315億円、受注棟数は4964棟。 同社によると、東京商工リサーチが昨年10月に年間売上高100億円以上の住宅会社を対象に行った調査で、売上高成長率が1位だった。1位となるのは創業以来12年連続。

今後のモデルハウスの展開としては、北海道マイホームセンター苫小牧会場の近隣地に着工した苫小牧市モデルと、同じく着工済のSTVハウジングプラザ北24条会場モデルが10月、北海道マイホームセンター札幌会場(豊平区)が来年1月、函館市は来春にオープン予定。旭川市については社員の採用が先行しているものの、苫小牧市と同様、総合住宅展示場に空きがないため単独モデルの建設地を探している。それぞれのモデルハウスに営業所を併設する。
同社の戦略商品ともいえるのが、長期優良住宅仕様の「N-ees+S(ニーズプラスエス)」だ。今年1月に「N-ees」として関東以西で発売したが、その基本仕様は北海道の住宅性能をクリアする仕様を想定して決めたという。その後、北日本を対象にした寒冷地仕様の「N-ees+(ニーズプラス)に続き、今年3月に北海道仕様の「+S」が完成した。
斎藤氏は「当社は一つのエリアに単一商品と決めている。普及タイプと高級タイプのように仕様を分けることは考えていない」と説明する。地域によって異なるのは凍結深度に基づく基礎の仕様だけだ。

「N-ees+S(ニーズプラスエス)」は規格型ではなくフリープラン仕様。設計の自由度が高いことをアピールしている。
最大の特長はスキップフロアを利用した収納面積の大きさだ。一つの階層に複数の高さのフロアを設けることで空間を有効利用している。また、天井高1.4m以下の場合、直下の床面積の2分の1以下の広さの収納スペースは床面積に加算されないため、収納面積をさらに増やすことができる。
住宅性能は「耐震等級3」「劣化対策等級3」「維持管理対策等級3」「一次エネルギー消費量等級6」。UA値は0.28W/㎡K以下で「断熱等性能等級6」をクリア。1、2地域でのHEAT20のG2グレードを満たしている。
断熱仕様は、基礎断熱の外側に押出法ポリスチレンフォーム3種を75㎜、壁は内側に高性能グラスウール105㎜を充填し、外側にネオマフォーム45㎜を付加。換気は第一種熱交換型。天井はグラスウールブローイング400㎜を吹込み、窓は全て高性能トリプルガラス樹脂サッシ。1、2階とも床暖房が標準仕様となっている。
「+S」の平均坪単価は30坪の戸建住宅で90万~95万円になるという。土地取得費を合わせると4000万~5000万円になり、他の住宅会社に比べて決して安くない。
戸建用地は基本的に自社で購入せず不動産会社から得た仲介物件を施主に紹介するスタイル。建売住宅は販売しない。札幌市内を中心にすでに70社の不動産会社と提携しているという。
テレビCMやSNSなどで知名度アップを図るアイ工務店。道内住宅業界の勢力図が変わる可能性もある。