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座談会 住宅業界の未来を担う2代目経営者たち

座談会 住宅業界の未来を担う2代目経営者たち

新しい時代の価値観を創り出す

住宅着工戸数の減少や職人不足など課題が山積の住宅業界を、新型コロナウイルスの影響が追い打ちをかけている。そのような状況でも、先代から事業を継承し、その先を見据えてチャレンジする住宅会社の若手経営者は多い。住宅業界の未来は彼らにかかっているだろう。札幌市内の老舗住宅会社のトップとして互いに親交の深い3人の2代目社長に、会社を引き継ぐ思いと住宅業界の展望について聞いた。

座談会出席者

■三王建設興産(株) 代表取締役社長 安田敦司氏
■大進ホーム(株) 代表取締役社長 星野覚一朗氏
■竹内建設(株) 代表取締役社長 竹内哲也氏

司会 株式会社北海道住宅通信社 編集局長 郡司孝志

新規事業を視野に、中古住宅やリフォームも

ネットワークで協力し合う

「先代は口出ししない」跡を継ぎ、2代目の社長になるにあたって
――いつ頃から社長になることを意識し、いつ就任されたのか教えてください。

安田 大学を出て7年間サラリーマンをしていましたが、実家の後を継ぐため1994年に戻りました。社長に就任したのは2007年で、42歳の時です。

星野 私もサラリーマンで業種の違う企業で働いていましたが、跡を継ぐため2013年に当社に入社。副社長を経て2015年、37歳で社長になりました。

竹内 私は前職を経て、自分から会社に「入れてほしい」と頼み、2007年に入社しました。当時は、現会長の父から「実力がなければ社長にしない」と言われていましたので、社長を意識したのは副社長に就任する直前です。14年の2月に、現会長から「4月に副社長にして1年後に社長にする」と話がありました。40歳で社長に就任。ちょうど星野社長と同じ、15年ですね。

――跡を継ぐ時に先代から言われたことは?

安田 「会社の代表になるのだから、取引業者の方々やお客様に決して迷惑をかけてはならない」と、「業績の良し悪しがあっても、判断は自分の責任の持てる範囲でしなさい」と言われました。私が社長になった後は口出しすることはなく、すべて任せるスタンスでした。私も報告を欠かさず、コミュニケーションを図っています。

星野 特別に何か言われた記憶はありませんが、「意見は合わせていこう」という共通の認識がありました。反目しあう姿を社員に見せないように、意見が対立しても方向性を決めたら一緒にやっていこうと。今は会長からの意見はほとんどなく、私が相談することに対して応えてくれる形になりました。

竹内 私の場合は副社長になる時に代表印を渡されて、「基本的に、社長になったつもりでやってみなさい。任せたからには今後一切口を出さない」と言われました。社長派と会長派で分かれることがあってはならないと考えていたようです。それで借入れから社員の給与・賞与査定まで、全て自分の判断で行いました。現在、会長には、業界団体など対外的な活動に力を入れていただいています。

「新規事業より体制の強化を」社長に就任してまず取り組んだこと
――社長に就任した時、こうしようと思ったことは?

安田 当時は住宅のほか、公共工事など様々な仕事を請け負っていました。しかし、社長を引き継ぐ前年の業績があまり良くなかったので、今後の会社の方向性を考え、住宅に特化していこうと考えました。作業場や住宅展示場など整理するものは整理して、効率的な経営ができる体制を整えました。

星野 私は業績を上げるために自分に何ができるかを考えました。新規事業にも関心がありましたが、まずは本業において気が付いたことから改善していくことにしました。例えば、ホームページをリニューアルしたり、社員同士の情報が不十分だったので、情報の見える化も行いました。住宅の仕事とは直接関係のないところから取り組んでいきました。

竹内 社長になって3年間は新しいことを「何もしない」と決めていました。敢えて大きな変化を求めず、組織や財務体質などを強化。引き継いだものを「幹をより太くする」ことに注力しました。結果として、しっかりとしたベースができて良かったと思います。4年目から新規事業を始めました。例えば、「不動産相続の相談窓口」を設けたり、「民泊事業」をスタートさせたり。どれも時代のニーズに応えるものです。

「理念は変えず、伝え方を変える」引き継いだこと、新しくしたこと
――先代から変えなかったこと、変えたことは?

安田 当社は1964年に札幌市西区で創業以来、55年以上にわたって地域密着の家づくりを行なってきました。「エリア拡大、規模拡大よりも地元ベースで堅実に経営していく」という基本的なスタンスは変わりません。もちろん時代の変化に合わせて、顧客データベースやグループウェアなどIT化を進めています。商品構成も変えています。ですが、土地も西区に集中しており、「地元に特化してシェアを上げていく」ことを目指しています。また、外部のコンサルティングを起用し、定期的に客観的な会社の実情の把握に努めています。また、その結果としての課題や目標を社員全体で共有するようにしています。今は役員の世代交代の時期でもあり、今後の幹部候補生の研修や経営的視点のスキルアップのための勉強会も行っています。

星野 家の仕様などのハード面は大きく変えていませんが、「お客様への魅せ方」を変えました。マーケティング手法を取り入れ、集客もホームページなどWEBの効果的な活用に重点を置くようにしました。また住宅業界では個人商店のような体制が依然多かったように思いますが、チームで仕事をする意識を高め、組織の強化を図りました。それまでなかった外部とのつながりを作るため、LIXILリフォームショップやサイエンスホームなどフランチャイズにも加盟しました。自社のことしか知らなかった社員たちが他の会社の情報を知ることで、良い意味での切磋琢磨につながっています。今後は、地元の東区から札幌全域へ営業エリアを少しずつ広げていきたいと思っています。

竹内 私も現会長が積み上げてきたことを否定することはありません。当社の創業の精神「家づくりを通して一生涯のおつきあい」と「社員と家族を守る」という言葉は、経営者として心に刻み、経験を積めば積むほど一層大切なことだとわかりました。一方で、今年4月からコーポレートアイデンティティを一新しました。ブランドミッションを変えたというより、今の時代やこの先の未来の方々に共感いただけるように伝え方を変えたと言ったほうが正解です。ブランドブックを発行し、新しい社章やロゴを作りました。2年前に、リ・ブランディングを行うパートナーと出会い、昨年1年間をかけて社内でミーティングを繰り返しました。目指したのは見た目を変えることではなく、社員の意識、つまりインナーを強化することです。リ・ブランディングは1回やって終わりではなく、常に磨き続けることが大事だと思っています。

「お客様との対面は無くならない」住宅業界の今後、アフターコロナに思うこと
――住宅業界全体の今後についてどう見ていますか?

安田 新築の需要が減少しているなか、今回の新型コロナの影響もあり、住宅業界は難しい局面にあると思います。中古住宅やリフォームへのシフト、ZEHや省エネ住宅の方向性など進むべき道を模索しなければなりません。

星野 私も今後は中古住宅やリフォームのニーズが増えてくると思います。一方、当社では高単価のリフォーム案件の受注を大きくは取り込めていないのが現状です。技術的に難しい部分や制度的な複雑さもあり、人員を割かないと対応が難しいのが高単価のリフォームです。今後も新築事業とのバランスを見ながら事業を進めていかなければならないと考えています。

竹内 私たち2代目がネットワークで協力し合うことも良いのでは。お互いのリフォームのノウハウやそれぞれのお客様との接点を合わせれば、できることが増えるでしょう。リフォーム専門の社員をわざわざ配置しても非効率的なことになりかねません。お互いの社員を状況に合わせてフリーランス的に融通し合うことも考えられます。

安田 確かに土地についても、他のエリアで建てたいというお客様がいたら、紹介し合うことができますね。

――アフターコロナは、どんな世界になると思いますか?

竹内 新型コロナをきっかけに、今まで変えなければと思いながらも変えていなかったことが、半強制的にやらざるを得なくなりました。お客様との接し方やテレワークなどの働き方を見直す上で、得たものも多かったと思います。今後は人口が減少するので、住宅市場が収縮していくのは避けられません。しかし私たち地場のビルダーは、札幌市内のシェア率で1%もないでしょう。戸建住宅の着工数が半分になったとしても、1万戸が5000戸になったというなら、シェア率を2%に上げればいいのです。それくらいの努力はできるのではないかと思います。また人口は減るけれど、シニア層は増えます。そこで住宅会社として考えられることもあるのではないでしょうか。

星野 住宅着工戸数の減少問題は以前から言われていましたが、新型コロナの影響で業界はますます厳しくなると思います。飲食店や観光業が大打撃を受け、それが世界中で起こっています。コロナ以前の景気が良い状態に戻るには、相当時間がかかるのではないでしょうか。
そんな中でも営業の仕方は、本質的には大きくは変わらないと思っています。住宅は、インターネットで購入ボタンを押すだけで買えるような商品とは異なるので、お客様と直接お会いすることが大切になってきます。WEBツールは、すでに面識のあるお客様とのお打ち合わせ等での活用が主になってくるのではないでしょうか。

安田 私もお客様とのきっかけ作りは、ユーチューブやSNSなどWEBツールの活用が進んでいくと思います。しかし最終的な契約は、お客様との信頼関係で結ばれるので、対面は無くならないでしょう。アフターコロナの世界では、リフォームなどのニーズが高まると思っています。自宅で仕事をする人が増えているので、快適に過ごせる環境作りが求められるでしょう。

竹内 店舗併用住宅の見直しも良いのでは。新型コロナによる外出自粛で地域の個人商店が混んでいるというニュースがありました。遠くに行かなくても顔見知りの人同士が安心して買物ができる、地元のエリアでそんな地域づくりをしていきたいと思います。

「継ぐなら本気と覚悟を」未来の2代目にアドバイス
――これから会社を継ごうとしている方々へメッセージをお願いします。

星野 社長になって良かったと思うのは、自分で決められる自由さがあること。これをやりたいと思えば、状況が許す限りなんでもできます。また、前職のサラリーマンだった時に比べると、それまで会ったことのない様々な人たちと話ができ、自分自身の成長を実感することがとても多いと感じました。ただ、一度社長を引き継いだら多くの責任が発生しますので、そう簡単には辞められない覚悟が必要になってくるとは思います。

竹内 2代目の中には、先代のマイナス面をリセットして社長になりたがる人が多いのですが、プラスもマイナスもすべてひっくるめて受け入れられなければ社長は務まりません。極端な例ですが、先代が行ったことで施主から裁判に訴えられた時、自分は関係ないと思うのではなく、きちんと誠意を持って謝罪する覚悟がないのなら、最初から社長にならないほうがいいと思います。そもそもマイナス面をリセットしたいのなら、自分で創業したらいいのではないでしょうか。

安田 現会長は、私がたとえ後を継がなくても「好きなことをしなさい」と言ってくれました。後継者が本当にやりたいと思う強い意志がないと、中途半端な気持ちでは本人も周囲も辛いことになると思います。

竹内 先代は、古いままではこれからの経営が厳しくなると思って若い世代に譲ろうとします。時代の変化を感じて会社を変えようと、新しい価値観を持つ若者に託すのです。私たち3社が共通しているのは、現会長が「任せた後は口を出さない」と言ったことです。そういう会社の方が上手くいくと思います。

星野 会長は口を出したいのだろうなと思う場面があっても、明らかに我慢して見ないふりをしてくれました(笑)。

――継ぐなら本気で、譲るなら任せるということが継承の要ですね。本日はありがとうございました。

三王建設興産㈱
1964(昭和39)年創業。80年に増改築センターを開設し、リフォーム部門を強化。14年、不動産事業部を発足。
札幌市西区を中心に、これまで分譲地の造成、家具・インテリアの販売、官公庁工事、ビル・マンション建設などにも取り組んできた。現在は創業の原点である住まいづくりに特化し、新築事業(注文住宅・分譲住宅)、リフォーム事業、不動産事業(宅地分譲・中古住宅再販・仲介)を三本柱の事業として取り組んでいる。経営理念は「感謝・和・努力」。

大進ホーム㈱
1971(昭和46)年創業。札幌圏域を中心に7000棟以上の施工実績を持つ。
OB施主の声やスタッフ・ブログなど、「人」を感じられるホームページが好評。ライフスタイルの変化や価値観の多様化にも対応できるよう技術を磨き、「自分らしさを叶える家」をコンセプトに住み心地と快適性を兼ね備えた新築住宅の提案を行うとともに、家づくりを通じて一生涯のお付き合いを合言葉に、リノベーション、リフォームから、買い取りまで多岐にわたって対応可能な仕組みづくりに注力している。

竹内建設㈱
1978(昭和53)年創業。新築、リフォーム、不動産部門を強化しながら、企業ブランドの構築を目指している。
LIXILメンバーズ住宅コンテスト「リフォーム部門」で、優れた作品に贈られる「地域最優秀賞」を直近の6年間で5回受賞。地域密着型工務店として培った技術力、デザイン力は全国的にも高く評価されている。
構造材・パネル加工、建て方工事のエーステック、不動産売買のたけうち不動産を合わせたグループ全体の社員数は112人。

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